事業推進方針

21世紀COEプログラム「野生動物の生態と病態からみた環境評価」
第2期(平成17〜18年度)事業方針
拠点リーダー 坪田敏男
1.基本方針
1) 野生動物の生態および病態を切り口として環境評価につながる研究を推進する。そのためのモデル動物を設定し、社会的インパクトのある事業を展開する。
2) 従来の獣医学の枠組みを超えた他分野(生態学や環境科学)との連携によるプロジェクトを推進する。
3) 公募型からプロジェクト型に事業を転換する。とくに拠点リーダーのリーダーシップを重視した事業を積極的に推進する。
4) 連合大学院の特色を生かした事業とする。そのために4大学連携型および共通型の事業を推進する。
5) 過去2年間(第1期)の研究実績を考慮して、各プロジェクトを推進する研究チームを編成する。
 
2.フレームワーク
1)ツキノワグマとイヌワシの棲む森プロジェクト
森林生態系を代表しアンブレラ種といわれるツキノワグマとイヌワシに焦点を当て、学際的および総合科学的に(他研究分野との連携を含む)研究し、本COEプログラムの目的とする環境評価につながるモデル事業を展開する。これら2種の動物が個体数を減らすことなく健全に生息していける自然環境とはどのようなものかを、生理・生態学的および環境科学的な手法を用いて、複数地域(岐阜県白川村、滋賀県伊吹山、岩手県周辺)での合同調査によって明らかにする。また、獣医学的アプローチにより病態や環境汚染の指標としての研究も展開する。なお、2種の動物を選択した理由は以下のとおりである。

ツキノワグマ:これまでの蓄積が豊富で、研究環境が整っている。拠点リーダーの坪田が日本クマネットワーク(JBN)の代表も兼任しており、他の研究分野(生態学や環境科学)の研究者との連携が図られる。2006年10月に国際クマ会議(IBAとJBN主催)が軽井沢で開かれ、その際サテライトシンポジウムの開催など国際的な研究交流の場が設定できる。具体的に、岐阜県内の異なる生息環境(根尾村(現本巣町)と白川村)におけるツキノワグマの生態からみた環境評価を実施できる。

イヌワシ:これまでの蓄積があり、研究環境が整っている。拠点リーダーの坪田と共同研究している須藤明子((株)イーグレットオフィス)が日本イヌワシ研究会に所属しており、他の研究分野(生態学や環境科学)の研究者との連携が図られる。

研究チーム:○坪田、淺野、須藤、青井、由井 他
 
2)野生動物を指標とした環境モニタリングプロジェクト
以下の(1)および(2)を統合して、環境モニタリングの中核拠点としてCOE野生動物医科学研究センター(仮称)を立ち上げ、本プロジェクトを推進する。

(1)野生動物の死体分析および感染症に関するデータベース化:岐阜大学と岩手大学
 何らかの原因で死亡した野生動物の死体を収集し、拠点大学(岐阜大学と岩手大学)にて病理解剖を実施し、その死因を究明すると共に病理所見を全国共通のデータベースにより保存することを目指す。とくに感染症の早期発見、早期予防のためのモニタリングは重要な目的の一つであり、COE野生動物感染症センターとして拠点形成をめざす。

(2)COE野生動物救護センターを活用した救護原因分析のデータベース化:岐阜大学、福島県鳥獣保護センター、野生動物救護獣医師会、沖縄県救護獣医師会などと協力

上記死体と同様に、野生動物救護の原因を究明すると共に臨床所見を全国共通のデータベースにより保存することを目指す。感染症についても死体と同様である。

研究チーム:○坪田、淺野、井澗、柵木、柳井、酒井、源、福士 他
(上記他機関との共同研究、日本野生動物医学会のバックアップあり)
 
3)4大学連携型研究プロジェクト
(1)稀少野生動物の生態と繁殖
 日本には、カモシカ、ヤマネコ、猛禽類など希少野生動物が多く存在し、その個体数減少の原因究明と対策が必要とされている。本プロジェクトでは、そのような課題に対して生態学および繁殖学的見地から科学的な貢献を目指す。

研究チーム:○田谷、三宅、小原 他

(2)ヒト−家畜―野生動物間に伝播する感染症
 近年、流行のみられるSARSや高病原性鳥インフルエンザなどヒト−家畜−野生動物間で伝播する感染症の伝播様式や病原体についての解明を目指す。とくに野生動物の果たす役割について注目する。

研究チーム:○福士、源、岡田 他

(3)野生動物を指標とした環境汚染モニタリング
 炭粉沈着や環境ホルモン蓄積など環境汚染物質の野生動物への影響はこれまでに報告があり、さらにその動向をモニタリングしていく必要がある。新たな環境汚染物質も視野に入れて、指標となる病理所見の提示を目指す。

研究チーム:○柵木、西村、津田 他
 
4)各年2大学における公開講座の実施
本COEプログラムに関連する学術成果を積極的に社会に還元する目的で、年に2回(岐阜大学と他大学)公開講座を開催する。そのために500千円/大学を配分する。岐阜大学では、一般市民を対象として、平成17年度に「野生動物の救護活動から見えるもの(仮題)」、平成18年度に「地球に共に生きる野生動物たち(仮題)」を開催する。また、平成17年度に帯広畜産大学にて、日本野生動物医学会との共催シンポジウムを開催する。
 
5)特別講義を活用したワークショップの開催
連合獣医学研究科の重要な行事の一つである特別講義(教員および大学院生1年が参加)の機会を利用して、約2時間のワークショップを開催し、大学院教育に貢献する。
 
6) 若手研究者(COE研究員、大学院生)の育成
従来どおり、本COEプログラム事業を中心研究課題とする大学院生が参加する場合に250千円/人を配分する。また、本COE事業全体に関わるCOE研究員1名を雇用する。
 
7) 事務局経費
従来どおり、事務員他を雇用する。第1期の報告書を冊子として纏め、関係機関に配布する。
 
8)国際シンポジウムの開催
平成18年9月に本COEプログラムの成果発表および国際連携を目的として国際シンポジウムを開催する。同時に第12回日本野生動物医学会大会を開催する。場所は岐阜周辺。
 
1期(平成14〜16年度) <事業推進方針>
[目標]
1) 日本における野生動物医学および環境評価研究の基盤確立
2) 日本における野生動物医学および環境評価研究の人材育成
3) 野生動物医学および環境評価に関する国際的な研究活動の活性化
4) 野生動物医科学研究センター設置に向けての準備
5) 一般市民の野生動物保護および自然環境保全思想の普及啓発
 
[骨子]
1) 野生動物の生態(生理を含む)、病態および環境評価に関する研究成果を出す。
2) 上記の研究を実践する大学院生をリクルートする。
3) 上記の研究を多角的視点からみるためにセミナーを開催する。
4) 上記の研究拠点形成のために他研究機関との連携を推進する。
5) 上記の研究分野での国際的な役割を担うような研究を展開する。
6) 社会的に重要度の高い(インパクトのある)研究を推進する。
7) 一般市民への教育的配慮を伴う公開講座を開催する。
8) 研究成果を積極的に公開し、社会還元に務める。
 
[大枠]
1) 組織として、代表者(プロジェクトリーダー)1名、代表者代理(サブリーダー)1名および事業推進担当者2名の計4名を中心核とし(プロジェクト会議)、その下に事業推進担当者会議(10名)を配する。
2) 重点項目(生態と病態からみた環境評価)については、事業推進担当者(10名)を中心に研究を進める(戦略研究として位置づける)。各研究推進担当者は、大プロジェクトを考案し(数名の研究員が参画する)、それに関わる予算および研究員を統括する。これを研究班と呼ぶ。
3) 研究班は、生態班(生態、人工繁殖、生理など)、病態班(病理、人獣共通感染症、毒性など)および環境評価班(環境ホルモン、環境汚染物質など)の3つに分かれる。
4) 研究班とは別に、独自に小プロジェクトを立ち上げ、個別に研究を進める(一般研究として位置づける)。研究課題の選別は公募(岐阜大学連大内)によって募集し、その中から優れた研究を選択する。これを公募班と呼ぶ。
5) 上記の研究班と公募班とは別に、国際共同研究プロジェクトを立ち上げる。数名-十数名の研究グループによって海外の研究機関との国際共同研究を行い、リーダー(主に事業推進担当者)が予算および研究員を統括する。これを国際研究班と呼ぶ。
6) 上記3つの班構成については、途中で入れ替えを検討する。したがって1つの研究プロジェクトは2年を単位とする(継続して4年もあるが、その場合も2年毎に分けることとする)。
7) 研究員は基本的に岐阜大学大学院連合獣医学研究科に所属する教官および大学院生とするが、必要に応じて他大学および研究機関の研究者あるいは学部学生を研究協力者として含めることができる。
8) ホームページや公開講座などにより本研究拠点に関する情報を積極的に公開する。
 
[運営]
1) 研究に関わる組織、運営、予算などすべての事項について、プロジェクトリーダーを中心とする4名のプロジェクト会議によって原案を作成し、それを事業推進担当者会議(年4回:4半期毎)および連大代議員会に諮る。
2) プロジェクトリーダーのもとに事務員1名を置き、事務局を担当する。
3) 研究の進捗状況は、常時ホームページ上で公開する。担当は事務局。
4) 年に1回研究発表会(公開)を行い、各研究担当者は研究の進捗状況を報告する。
5) 最終年には国際シンポジウムを開催し、すべてのプロジェクトの報告を行う。
6) 日本野生動物医学会と連係して研究成果の公開を促進する。
 
[教育]
1) 博士論文の作成、セミナーやSCS講演会の開催などにより大学院教育研究を活性化させる。
2) 一般市民向け公開講座や講演会などの開催ならびに映画の作製を押し進める。
3) 動物園獣医師や鳥獣保護担当者などに専門家教育のためのワークショップを開催する。
 
[研究費の配分]
1) 全体の10%を共通経費として使用する。
2) セミナー、講演会、シンポジウム、ワークショップ、研究発表会などの開催、映画の作製、図書の購入など教育経費に約3,000千円/年を使用する。
3) 研究班による戦略研究に重点配分する(およそ10件)。
4) 公募班による一般研究には一律1,000千円/年を配分する(およそ10件)。
5) 国際共同研究に10,000千円/年を当てる(3〜4件)。
6) 大学院生が博士論文作成のために参画する研究には、一律500千円を追加配分する(10件以内)。
 
[研究成果発表]
1) 各自研究成果を学会発表、投稿論文、著書および総説といった形で学術的に公表する。その際には、必ずCOEによる研究助成を受けた旨を記載する。なお、発表要旨や論文別刷1部を事務局に送付すること。
2) 必要に応じて、研究報告(口頭発表および報告書作製)を行う。
3) 必要に応じて、一般市民向け公開講座や専門家対象ワークショップでの発表を行う。